暁に星の花を束ねて


『機密文書番号:BEH-NSX-2117
試薬名称:アンチナリア・シード抑制試薬
目的:ナノ毒による細胞崩壊症状の進行抑制
開発状態:試作段階にて開発中止』



報告書によれば、アンチナリア・シードは植物由来の
ナノ適応因子を用いた新型中和試薬。

高い抑制効果を持ち、短時間でナノ毒を沈静化させる機能をもっていた。

が、副作用が致命的だった。

細胞の変質。
色素異常。
硬質化。
繊維化。

感覚の喪失と、筋繊維の異常強化。

血中ナノ毒を一時的に安定化させる代わりに、投与対象の身体を根本から書き換える。

そして、そこには明確な記述があった。

「推奨投与回数:3回以内」

以降は生体リスクが臨界域を超える恐れがあるという。

しかし、報告書の最下部。

葵は、その数字を見て目を見開いた。




『被験者コード:Case Zero
投与回数:17回
臨界結果:変質開始、以降記録抹消』




「……十七回……?」

呆然と呟いた声は、無人のラボの中でかすかに反響した。

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