暁に星の花を束ねて
「星野さん。実は私はあなたの父君、星野善一先生にお会いしたことがあります。アンチナリア・シードを医療用登録に来られた時です」

「え?」

葵は顔を上げた。

「繁殖できない種を登録する意味は一つ。産業利用の排除です。先生はそれを承知で医療用として登録された。……あなたと研究を守るために」

馬渡の声は静かだった。

「ステラ・フローラは未登録で、存在自体が秘匿されています。希望にも、絶望にもなりうる花。だからこそ、先生は別の花を盾にしたのでしょう」

葵の胸が強く締めつけられた。

父が自分を、そして研究を守るためにそんな細工をしていたのか。
静かに机の上に視線を落としながら、葵は唇を噛みしめた。

ページの隅には、星野善一の筆跡でこう記されている。



「対象は耐性ではなく拒絶体質。
ナノ毒が体内に入るたび、免疫がそれを拒絶し、
結果として自己崩壊を起こす。
回復は不可能。
ただし、その拒絶反応を制御できれば、
治療理論の新たな鍵となる可能性あり。」



制御できれば。
その言葉が胸の奥で響いた。

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