暁に星の花を束ねて
「……?」

葵は顕微鏡から目を離すと、手元の端末を手に取った。
目の奥がじんわりと重い。
昨夜からまともに眠れていないせいだろう。

メールだった。
差出人は見覚えのない一般アドレス。

だが社内セキュリティは、それを問題なしと判断していた。

脅威レベル、ゼロ。
ウイルス判定、ゼロ。

送信元も国外ではなく、区内の正規回線。

(業者さんかな……?)

軽い気持ちで開いたその文面は、しかし、彼女の心臓を締め付けた。





件名:懐かしい記憶から

星野葵さんへ。

君には十年前、命を救われました。
あの頃の君らしき人物と、ようやく連絡が取れるようになり、とても嬉しく思っています。

お父様、星野善一先生には、本当にお世話になりました。
今日、そのお墓まいりに行こうと思っています。
少しだけ話せたら嬉しいです。
久しぶりに、ありがとうを伝えたいだけなのです。






「……!」

息をのみ、指先がかすかに震えた。

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