暁に星の花を束ねて
再び戦略部門戦略室──
佐竹はわずかに息を吐き、ネクタイを緩めたままの手で通信端末を開いた。
「……『扇』を呼べ」
その名を聞いた瞬間、片岡が顔を上げる。
「ですが扇は現在、陽動任務の──」
「構わん。陽動は切り替えだ。骸隠が動いているのなら、正面をおまえと朝倉に任せる」
朝倉楓課長が一歩前に出た。
「了解。社外拠点との調整は私がやります。佐竹部長、あなたは……行くのですね?」
「ああ」
短い返答。
その声に一片の迷いもない。
「影班本隊はおれが指揮する。任務は一点、星野葵の奪還。それ以外は不要だ」
廊下に足音が響く。
黒いスーツの背中が、薄い霧の奥へと溶けていく。
楓はその背を見送りながら、まるで祈るように呟いた。
「……どうか、間に合って。」
赤い警告灯が再び明滅する。
その中心で、SHT戦略部門『影班』の作戦コードが確定する。
この瞬間、スクナヒコナ・テクノロジーズの地下網は
すべて影の制御下に置かれた。
そして廃棄された第三区研究区画の外縁。
かつて「星野善一診療所」があった場所。
風が止み、闇が音を飲み込む。
わずかに落ちた花弁だけが、彼女の存在を示していた。
佐竹はわずかに息を吐き、ネクタイを緩めたままの手で通信端末を開いた。
「……『扇』を呼べ」
その名を聞いた瞬間、片岡が顔を上げる。
「ですが扇は現在、陽動任務の──」
「構わん。陽動は切り替えだ。骸隠が動いているのなら、正面をおまえと朝倉に任せる」
朝倉楓課長が一歩前に出た。
「了解。社外拠点との調整は私がやります。佐竹部長、あなたは……行くのですね?」
「ああ」
短い返答。
その声に一片の迷いもない。
「影班本隊はおれが指揮する。任務は一点、星野葵の奪還。それ以外は不要だ」
廊下に足音が響く。
黒いスーツの背中が、薄い霧の奥へと溶けていく。
楓はその背を見送りながら、まるで祈るように呟いた。
「……どうか、間に合って。」
赤い警告灯が再び明滅する。
その中心で、SHT戦略部門『影班』の作戦コードが確定する。
この瞬間、スクナヒコナ・テクノロジーズの地下網は
すべて影の制御下に置かれた。
そして廃棄された第三区研究区画の外縁。
かつて「星野善一診療所」があった場所。
風が止み、闇が音を飲み込む。
わずかに落ちた花弁だけが、彼女の存在を示していた。