暁に星の花を束ねて
花と檻
意識がぬるりとした沈黙の底から浮かび上がってきた。
夢と現の境界は曖昧で、だが瞼を開けば即座に現実の輪郭が襲いかかる。
天井。
鉄の腐臭。
白熱灯の残骸。
壊れたモニターと錆びたパイプ。
ここは廃棄された研究施設。
いや、もはや監獄と呼ぶ方が正確だった。
「……ここは……?」
星野葵は呻くように呟いた。
だが四肢はまったく動かない。
ナノ合金の拘束具が、まるで冷たい蛇のように手首と足首を締め付けている。
呼吸をするたび、喉の奥に錆びた味が広がった。
横目に見えるモニターには、彼女自身の心拍・呼吸・脳波・体温・ホルモン濃度までが表示されていた。
ヒトという被験体の全反応を測定するための、生体実験用インターフェース。
葵は、この装置を知っている。
この装置は本来、動物の安楽死処置に使われるものだ。
呼吸と心拍を一定のリズムで止め、苦痛なく終わらせるための機構。
その対象が、今は自分にすり替えられている。