暁に星の花を束ねて
「命じられたのは、あなたを救うこと。命じられていないのは、あなたを見捨てることです」

その言葉に葵の胸が震えた。

玉華は静かに笑い、影の中でもその瞳はまっすぐな光を宿している。

「皆、葵さまのご帰還を心待ちにしております。帰還後、わたくしは佐竹さまにお叱りを受ける予定です」

「……叱られる……?」

玉華は小さく息を整えた。

「実は、わたくしは佐竹さまがいらっしゃるまで、待機を命じられておりました。……ですが待っているうちに、我慢ができなくなりまして」

その声に、かすかな苦笑が混じった。
まるで自分の焦りを茶化すように。

「佐竹さんが来るの!?」

葵が驚きに目を見開く。
その声には、安堵と動揺が入り混じっていた。

玉華はわずかに首を傾げ、唇に微笑を浮かべる。

「ええ。すでに動かれているはずです。あの方のことですから、救出は計画ではなく実行でしょうね」

冗談めかした一言。
だがその瞳には、確かな信頼の光が宿っていた。

「でも佐竹さんは、ナノ毒に……!」

葵の声が震える。
その言葉に玉華はわずかに肩をすくめ、軽く笑った。

「そんなことで、戦略部長が務まるはずがありません。そうは思われませんか?」

葵ははっとして玉華を見つめた。

玉華の表情には、確信とも願いともつかぬ穏やかな強さがあった。

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