暁に星の花を束ねて
「信じましょう、葵さま。あの方が必ず、ここまで辿り着かれます」

玉華は静かに云い、わずかに目を細めた。
葵の肩の力が少し抜けるのを見届けると、わざと軽い口調に戻す。

「居ても立っても居られず──独断先行、命令違反、通信遮断。「たまには云うことを聞け」と仰るでしょう」

苦笑を浮かべながらも、その声音には確かな誇りと温もりが滲んでいた。

「……ふふ……」

葵の頬に、かすかな笑みが戻る。

その表情を見て玉華はほっと息をついた。
ほんの一瞬だけ、戦場の空気が和らぐ。

それを確認すると彼女は再び忍の顔に戻り、静かに視線を前へ向けた。

「ですから共に帰りましょう。必ずこの檻を壊してご覧にいれます」

その時、玉華がわずかに顔を上げた。
その瞳には、わずかに影が宿っている。

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