暁に星の花を束ねて

義と救いの約束

装置を慎重に外しながら玉華が静かに返した。
その声音には、恐れよりも哀しみが滲んでいる。

「『扇(おうぎ)』は、もとは同じくGQT所属の暗殺部隊でした」

玉華は視線を逸らさず、拘束具を慎重に解いていく。

「そして、ここに葵さまを連れ去ったのは『骸隠(むくろがくれ)』という、GQTが育てた暗殺部隊です。
 ……展示会場での襲撃事件を覚えていらっしゃいますか? あれも骸隠でした」

「……!」

展示会場。
警報と火花の音。
逃げ惑う人々。
突き刺さるような視線。
そしてあの一瞬の殺意の冷たさ。

(……あの時、わたし……身体が拘束されて動かなくなって……気づいたら……)

佐竹さんが、助けてくれた。

葵は息を呑んだ。
胸の奥で途切れていた線がつながる。

理解が脳裏で形となった瞬間、
今目の前にある恐怖が、別の色に変わった。
 

あの時からずっと狙われていたのだ。


拘束具の内側を走る細い配線が、
玉華の指先で確かな音を立てて外れる。

「……骸隠……」

葵は震える声で呟き、
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