暁に星の花を束ねて
静かな横顔でロックを外し続ける玉華を見つめる。

玉華は淡々としながらも、どこか哀しみを抱いた声で続けた。

「そして葵さまをここへ連れ去ることができたのは……彼らが内部構造と処分装置を熟知していたからでしょう」

その言葉は、静かでありながら確かな怒りを含んでいた。

「『骸隠』は肉体をサイボーグ強化した最強の忍部隊。 わたくしたち生身の忍は、彼らのフィールドテストに使われる資料でした。 性能比較のための生体実験……すなわち、死ぬことで完成を証明する存在です」

淡々と語るその口調の奥に、長い沈黙の痛みがあった。

「ですが、あの日。 佐竹さまが現れ、わたくしたちを救ってくださった。 敵であるはずのわたくしたちを、です」

「……佐竹さんが……?」

「はい。 敵味方は状況で変わるが、人の命の価値は変わらないと、仰いました。 その言葉に、わたくしは初めて義というものを知ったのです」

金属の鎖が最後のひとつを断ち切る乾いた音が響く。

玉華は微笑んだ。

「だから今度は、わたくしが救う番です。 佐竹さまが命を賭して守ったあなたを」

葵は目を見開き言葉を失った。
涙が頬を伝い、拘束の跡を静かに濡らしていく。


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