暁に星の花を束ねて
完全に拘束が外れた瞬間、葵の身体が力を失い前へ崩れた。

「──っ!」

佐竹が即座に腕を伸ばし、葵を受け止める。

細い肩が震えていた。
抑えていた感情が、堰を切ったようにあふれた。

「……佐竹さん……っ……!
怖かった……っ……!
二人とも……死んじゃうかと思った……!」

涙が佐竹の胸元に落ちる。
葵は反射のように、佐竹の胸にしがみついた。

「……」

佐竹は短く息を止めた。
葵の腕は震え、必死に生を確かめるような抱擁だった。

「ごめんなさい……っ……ごめんなさい……!!」

泣きながらの謝罪は痛いほど無防備だった。
佐竹は静かに腕を回し、その背に手を添えた。

「……謝るな」

その声に、葵の強張りがゆっくりほどける。

玉華は二人から目を外し、周囲の警戒へ移った。
忍としての気遣い。
そしてその瞳には、まだ見ぬ代償が潜んでいた。

赤い非常灯が弱く脈動し、三人の影を長く伸ばす。

「外へ出ます。警備班が近づいています」

玉華の報告に佐竹は短く頷き、
葵もようやく彼の胸から身体を離した。
指先はまだ震えていたが、佐竹がそっと肩へ手を添える。

数秒後。

扉の向こうから警備班と公安の足音が押し寄せ、
廃棄施設はようやく救出後の現実へ戻っていく。

ほんの数分後、残されたのは鑑識ライトの淡い光と、
焼け落ちた装置の残骸だけだった。

救出は成功だ。

ただ、このとき葵はまだ知らなかった。

月哭を抜き放った代償が、
玉華から視力を奪っていたことを……。






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