暁に星の花を束ねて
「最初は、あんたを失墜させるための餌だと思っていたが……星野葵は、その条件を完璧に満たしている。
あの女が消えれば、世界の秩序は保たれるんだ」

沈黙が落ちる。

佐竹は知っていた。

凛翔の歪んだ嗜好を抑えるために、その欲望の行き先として、フィールドテストの現場に送り出していた父親がいたことを。

少名彦隼人。

そこで何が行われていたのかも。

佐竹は、ふっと息を吐いた。
それは笑いにも諦めにも似た音だった。

「……息子の尻拭いをさせられる父親も、大変だな」

視線だけで、凛翔の奥にある影を射抜く。

「ベンチャーで名を売ったかと思えば、次はGQTと手を組んでSHTを脅かす。
ずいぶんと、忙しい人生だ」

空気が、さらに冷えた。

「……何が云いたい?」

凛翔の声が、わずかに歪む。

「GQTと組み、星野葵を売り、SHTまで奪おうとした。
それがおまえの選んだ道というわけだ」

佐竹は目を閉じた。
だが次の瞬間、その瞳は刃の光を帯びて開かれる。


「全て、ここで終わらせる。
星野葵には、指一本触れさせない」

「その自信、どこまで保つか見ものだな」


凛翔はテーブルの上の注射器を手に取った。
中で赤紫に濁った液体が、不穏に揺れている。

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