暁に星の花を束ねて
「カオス・カリクス・インフィニティの抽出液だ。
おまえ、一度浴びたよな。二度目は……どうなるか、わかっているだろう?」

沈黙が落ちる。

佐竹の表情は変わらない。
その沈黙が、凛翔の神経を逆撫でする。


「……その前に、その正体を見せてもらおうか。
おまえの弱点を」


凛翔は、佐竹の右手の手袋に手をかけた。


「人に見せられないんだろう?」
「勝手に想像しろ。下衆な方が正解だ」


ゆっくりと、手袋が剥がされる。

そこにあったのは──灰色に変色し、金属のような光沢を帯びた異形の手。
青黒い網目模様。
不規則に脈打つ血管。

凛翔の瞳が、獣のように輝いた。


「……やはりな」


抑えきれぬ喜悦が、唇の端から漏れる。


「やっぱりな……おまえ、化け物だ。それでいて英雄ヅラか……笑わせるな」

佐竹は目を細め、低く笑った。


「そんなに気に入ったのなら、切り取って便所にでも飾っておけ。おれに勝てた記念って札でも付けてな」


凛翔の笑みが一瞬、引きつる。


「せいぜい幻想にすがってろ。おまえが座る玉座なんざ、最初からその程度だ」

「黙れ……! まだ負けたつもりはないらしいな!」


その瞬間――

針先が、佐竹の首筋を貫いた。

体内に冷たいものが流れ込み、視界が一瞬、白く焼ける。

だが、凛翔は笑っていた。
耐える佐竹の顔を、快楽に濡れた瞳で覗き込む。

「どうだ? 感じるだろう。おまえの中が……ほどけていく」

佐竹の指が、わずかに震えた。

「………!」

それは肯定か、それとも嘲笑か──。

「やっとだ。やっとおまえを、消せる……!」

凛翔は恍惚とした表情で天井を仰いだ。

「長かった……! ずっと邪魔だったんだ、佐竹蓮!! あの日からだ。全員がおまえしか見なくなった日からな」

赤紫の液体が、すべて注ぎ込まれる。


「これで……これで、SHTは完全におれのものだ……! GQTも!! 血族が守ったんだ!! 父さんも、これでおれを認める……!!」


その狂気の祝福は誰からも返されていなかった。

そして次の瞬間だった。

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