暁に星の花を束ねて
一方、その渦中にいる当人── 佐竹蓮はまだ、病室にいた。

点滴の滴るリズム。
心電図の緩やかな波。
そのすべてが、消えてしまいそうな細い命の遠い所在を示していた。

世界が彼を取り巻いて騒いでいることなど、まるで関係ないかのように、彼は目を閉じている。

葵は、佐竹の手を握りしめていた。
中和剤の副作用で変質してしまった手。

少しでも手を離したら、このまま彼が戻ってこないような気がして。


「……ねぇ、佐竹さん。世界中が、あなたのことで大騒ぎですよ」


けれど返事はない。

葵はほんの少しだけ笑って、額を彼の手にあずけた。


「でもわたしは、佐竹さんがちゃんとここにいるって知っていますから」


外の世界がどれほど荒れていても、 この小さな病室の空気は、ひどく静かで、あたたかかった。


何度名前を呼んでも返事はなかった。
温室で見た、あのメッセージ──『Be happy AOI』。


あの文字が頭を離れず、胸が何度も締め付けられた。


(あなたがいなくなったら……幸せになんてなれない。
だから生きて……生きてください、佐竹さん……)


あの事件から、佐竹が倒れてからすでに五日が経過している。

祈るように額を寄せた、そのときだった。


ピッ──


心電図の音が、ほんのわずかに変化した。

葵の胸が跳ねた。

次の瞬間、佐竹の指先がかすかに震えた。
一度、二度……葵の手のなかで、迷うように動く。

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