暁に星の花を束ねて
無慈悲な声が通路に響く。
ナノ刃が、青い軌跡を描きながら旋回する。
隊員たちは即座に防御姿勢をとる。
しかし訓練された精鋭でさえ、一瞬たじろぐほどの殺気。
しかし。
「そこまでだ」
その声で、空気が変わった。
タワー外部に停泊する黒いVTOL機から、三角形の投下ビーコンが放たれる。
落下と同時に衝撃波が広がり、
ナノ刃の軌道が乱れた。
「……何だ?」
宗牙が眉をひそめる。
ビーコンから展開したのは、SHT戦略部門・影班の紋章。
黒いコートを翻し、鋭い視線を持つ男が前に現れる。
片岡一真だった。
宗牙の瞳が細くなる。
「……戦略部門か。おまえが来るとは意外だな」
片岡は冷ややかに答えた。
「意外なのは、あなたの方でしょう。
撤退ルートは五つありましたが、三つは自壊、二つは偽装。
あなたがここを選ぶと読んでいました」
宗牙は口角を上げる。
「佐竹蓮の副官にしては、ずいぶん大胆な推理だ」
片岡は動じない。
「ええ。残念ながら、私は副官ではなくなりまして……。
代わりに、火を呑む役を引き受けに来ました」
VTOL機から追加の影班隊員が下降し、
通路の前後を完全封鎖した。
宗牙の笑みが消える。
「ほお……あやつの初命令というわけか」
片岡は短く息を吐き、
言葉を選ぶように続ける。
「その通り。『あなたを生かして捕縛せよ』との佐竹CEOからの要請です」
宗牙が初めて表情を変えた。
片岡は続ける。
「あなたが逃げれば、世界経済もナノ兵器も。あなた自身の過去も、誰も収拾できない、と」
宗牙の瞳が揺れた。
ほんの一瞬だけ、古い記憶を探るように。
そして。
旋回していたナノ刃が、音もなく霧散した。
宗牙は両手を静かに上げる。
「……あの男は、実に愚かだ。救う価値などない、この世界を……。それでも、か」
片岡は短く、
影班に合図を送った。
拘束具が宗牙の腕に固定される。
「紅蓮院宗牙。
国際監査院へ引き渡します」
宗牙は抵抗しなかった。
ただ一言だけ、
雨に溶けるように呟いた。
「……佐竹蓮。影の世界に手を伸ばすか。逃げ切れるが、それは無意味な勝利になる」
VTOL機が上昇する。
紅蓮院宗牙の逮捕は、その夜のうちに世界じゅうへ報じられた。
「火は鎮まり、影が世界を抱えた」
その暗喩とともに。
ナノ刃が、青い軌跡を描きながら旋回する。
隊員たちは即座に防御姿勢をとる。
しかし訓練された精鋭でさえ、一瞬たじろぐほどの殺気。
しかし。
「そこまでだ」
その声で、空気が変わった。
タワー外部に停泊する黒いVTOL機から、三角形の投下ビーコンが放たれる。
落下と同時に衝撃波が広がり、
ナノ刃の軌道が乱れた。
「……何だ?」
宗牙が眉をひそめる。
ビーコンから展開したのは、SHT戦略部門・影班の紋章。
黒いコートを翻し、鋭い視線を持つ男が前に現れる。
片岡一真だった。
宗牙の瞳が細くなる。
「……戦略部門か。おまえが来るとは意外だな」
片岡は冷ややかに答えた。
「意外なのは、あなたの方でしょう。
撤退ルートは五つありましたが、三つは自壊、二つは偽装。
あなたがここを選ぶと読んでいました」
宗牙は口角を上げる。
「佐竹蓮の副官にしては、ずいぶん大胆な推理だ」
片岡は動じない。
「ええ。残念ながら、私は副官ではなくなりまして……。
代わりに、火を呑む役を引き受けに来ました」
VTOL機から追加の影班隊員が下降し、
通路の前後を完全封鎖した。
宗牙の笑みが消える。
「ほお……あやつの初命令というわけか」
片岡は短く息を吐き、
言葉を選ぶように続ける。
「その通り。『あなたを生かして捕縛せよ』との佐竹CEOからの要請です」
宗牙が初めて表情を変えた。
片岡は続ける。
「あなたが逃げれば、世界経済もナノ兵器も。あなた自身の過去も、誰も収拾できない、と」
宗牙の瞳が揺れた。
ほんの一瞬だけ、古い記憶を探るように。
そして。
旋回していたナノ刃が、音もなく霧散した。
宗牙は両手を静かに上げる。
「……あの男は、実に愚かだ。救う価値などない、この世界を……。それでも、か」
片岡は短く、
影班に合図を送った。
拘束具が宗牙の腕に固定される。
「紅蓮院宗牙。
国際監査院へ引き渡します」
宗牙は抵抗しなかった。
ただ一言だけ、
雨に溶けるように呟いた。
「……佐竹蓮。影の世界に手を伸ばすか。逃げ切れるが、それは無意味な勝利になる」
VTOL機が上昇する。
紅蓮院宗牙の逮捕は、その夜のうちに世界じゅうへ報じられた。
「火は鎮まり、影が世界を抱えた」
その暗喩とともに。