暁に星の花を束ねて
少名彦凛翔
『SHT本社 第一会議室』
先ほどまで行われていた理事会の熱も、今はすっかり冷めきっていた。
会議の議題は
「次期経営構造に関する戦略的検討」
表向きにはそれで通されたが、実際には水面下で動き出していたある名前をめぐる試金石だった。
少名彦 凛翔(すくなひこ りんしょう)。
その名が初めて理事の口から正面切って語られた。
かつて彼は戦略統括本部に籍を置いていたが、今はその任を退き現場を離れている。
現在、戦略部門は佐竹蓮が統括部長として執行を担っており、凛翔の名が会議の場に再び登場することは、いささか異例とすら云えた。
凛翔が外部連携による新規プロジェクトを立ち上げていること。
すでに初会合の調整も済み、翌日、碧鱗の間にて社内初回商談が実施されること。
若手育成、試験的導入という名目で理事たちは黙認の体を取りつつ、CEOの子息という事実に静かに頷いた。