暁に星の花を束ねて
「どう捉えるかは、任せる」

曖昧な言い回しはもはや癖のようなものだった。
だが今回はもう一言、彼が続けた。

「……形式上は若手育成の実地訓練という扱いだが、外部連携も完了している。明朝、碧鱗の間で初会合がある」

「なるほど。ならばなおのこと、忌憚なく評価させていただきます」

情を差し挟む気はない。

その一言は、言葉以上に冷徹な意味を含んでいた。

そのとき隼人は初めて口元だけで笑った。
微笑にも冷笑にも見えるそれは父親というより、老獪な政略家の仮面だった。

「凛翔には、まだ見えぬものがある。おまえなら、それを暴けるだろう」

「……そうなるかもしれません」

佐竹の声に、わずかな間があった。

あなたにとって望ましい結果になるのか─

と、問いかけるかのようでもある。

二人の視線が交わった。

その刹那、この企業の未来を左右するいくつもの駒が静かに動き出したのだった。




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