暁に星の花を束ねて
葵がうなずくと結衣はカップをくるりと回し、わざとらしく眉を上げてみせた。

「ねえ、あれってさ。いじめられてる子が最後には迎えに来てもらえる話じゃん? なんか、葵ちゃんに似てるなーって」

「え、ええっ……?」

葵の肩がびくりと揺れる。
顔にふわっと朱が差し、耳まで熱くなっていくのが自分でもわかった。

「わたし、意地悪なんてされてないし……だれも、迎えになんか来ないよ……?」

「ふふっ、そう? でもさあ、いつも怒ってる戦略の黒い人がさ〜、なんか妙に構ってくるよね?」

「それはきっと……! 佐竹さんの戦略上の合理的な指導、とかだよ。個人の行動把握が危機管理上重要だって……云ってただけだし」

「へぇ〜? そーお?」
「もう、結衣ちゃん……!」

友人のからかいに顔を赤くする。
それは気まずさではなく、むしろ心地よい絡みだった。

葵は間をおき考えてから口にした。

「でもさぁ。戦略的シンデレラって、どんな風になるんだろうね?」

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