転生幼女と宰相パパは最強コンビ
 マーサには頭が上がらなそうな雰囲気であるところを見ると、マーサは彼が幼い頃から、この屋敷で働いているのかもしれない。

「あー」

 手を伸ばし、彼の袖口を掴む。

(……おおっ!)

 この服の感触、覚えがある。とても触り心地がいい。
 もしかしたら、あの時茜を抱えていたのは、この人だったのかもしれない。
 あの時の人は、マーサにいろいろ命じてからあっという間にいなくなったが、声に聞き覚えがあったの、あの時会っていたからなのかも。

「ぶー!」

 すりすりと肌触りを楽しんでいたら、そっと腕を引き抜かれた。もうちょっと触らせてくれてもよかっただろうに。

「それで、旦那様。お嬢様のお名前は?」
「名前?」

 茜を揺すりながらマーサは、『旦那様』に問いかけた。問われた相手の方は、不機嫌そうな声で返してくる。

「お嬢様を、正式にお屋敷で引き取ることになったと聞きましたよ」
「……ああ」

 マーサはにこにことしているけれど、『旦那様』の顔はまったく違う。

(……迷惑ってことなんだろうな……)

 しゅん、としてしまい、マーサの胸に顔を埋(うず)めた。
< 20 / 265 >

この作品をシェア

pagetop