転生幼女と宰相パパは最強コンビ
 この間購入したのは、千九百年代初頭の農業についての本。当時のヨーロッパでは何が栽培されていたのか、どんな風に栽培されていたのかが書かれている。
 大学で学んだのは経済学で、当時の専門分野に関する本ではないけれど興味はある。日本の農業とどう違うのかわくわくする。
 その気持ちを抱えたまま曲がった瞬間――目の前で起こったのは交通事故。そして、ぶつかった衝撃で一台の車がこちらに向かってきて――。

「危ない!」

 と叫んだのは、誰だっただろう。わからない。
 それが最期の記憶だった。


 ぱちり、と目を開ける。

(……夢、だった?)

 と、思ったのは、身体がどこも痛くないから。いや、どこもかしこもふにゃふにゃで、思うようにならない。
 見上げてみるけれど、焦点が合わない。視界はすべてぼんやりしている。
 誰か――と声を上げようとして驚いた。

「びぇぇぇぇぇぇぇ!」

 口から出たのは、どう考えても赤子の泣き声。

(……え?)

 驚いた拍子に、声が止まる。
 今のはいったい――?

 もう一度、人を呼ぼうとしてみた。

「ふにゃあああああああ!」

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