転生幼女と宰相パパは最強コンビ
 どうもこの国は安定していないらしく、イヴェリオには大量の仕事があると聞いている。
 国王は何をしているのだと思っていたら、まだ十二歳、もうすぐ十三歳になるらしい。それでは、イヴェリオが頑張らねばいけないのも納得だ。

「……まあいいや」

 とつぶやいた口調は、もしかしたら子供らしからぬものだったかもしれない。マーサの顔に、痛ましそうな表情が浮かんだ。

(……そうじゃなかった)

 リリカのことを厄介者としか思っていなかったとしても、屋敷に戻ってきた時には、欠かさず生存確認に来る。
 風邪を引いて鼻水がだらだらだった時には、マーサに『医師に見せなくて大丈夫なのか』と心配している言葉もかけていたから、悪い人ではなさそうだというのもちゃんとわかっている。
 ただ、リリカがもっとイヴェリオに近づきたいと勝手に思っているだけ。

「はやくおとなになりたいでしゅ……」

 フォークにさした苺を口に運んでぽつりとこぼす。
 もし、リリカが大人だったら、イヴェリオの仕事を手伝えるのに。大人達の会話をこっそり聞いているだけでも、この国が大変そうなことだけはわかる。

< 45 / 265 >

この作品をシェア

pagetop