転生幼女と宰相パパは最強コンビ
「最初は、面倒だと思っていたんだ」

 それは、イヴェリオにとっては、懺(ざん)悔(げ)に近いものだったのかもしれない。
 自分とアークスと国のことだけで精一杯なのに、そこに見知らぬ赤子まで引き取らねばならぬ羽目に陥った。
 未婚だし、兄弟もいないし、年下の親戚といえばアークスぐらい。友人の子供なんて、年に数回顔を合わせる程度。
 そんなイヴェリオが、子供を引き取るなんて無謀ではあった。
 無謀ではあったが、放っておいてはいけないと思った。国中を流行り病が襲った頃、何人もの死に立ち会った。
親を亡くした子供、子供を失った親。兄姉、弟妹――家族や親せきだけではなく、大切な友を失った者も。
 もちろん、精霊使いの素質を持つ子供を野放しにしておいてはいけないと思ったのも事実だ。この屋敷が一番安全であるのも本当のこと。
 だが、大切な人を失った悲しみを見続けた結果――せめて、目の前の赤子はどうにかしたいと思ったのだ。
 だから、屋敷にいるローゼスとマーサを信頼して預けた。ふたりならば、子供に悪いようにはしないと思って。

「だが、リリカを見ると――もっと喜ぶ顔が見たいと思うようになってきた」
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