転生幼女と宰相パパは最強コンビ
 前世の記憶があるという話はしたが、亡くなった時、イヴェリオより年上だったという話はまだできていない。彼からも聞かれなかったし。

(それで、こうふるまってるって知ったら、嫌な顔されるかなぁ……)

 頭の中と行動がちぐはぐなのは、リリカもわかっていた。けれど、この世界で三年生きてみて、『茜』の精神がだいぶ奥に引っ込んでいるのも感じ始めている。
 結局、心と身体のバランスを上手に取っていくしかないのだろう。

「おうさまが、いえにくるの?」

 なので、イヴェリオに対する時は、今まで通りの態度でいこうと決めている。
 肉体年齢と精神年齢がずれているのは、きっと皆わかっているだろうけれど、問われるまでは黙っておきたい。

「ああ。ドミの実験を見せようと思ってね」
「よなきしょう!」

 他の書類の間にまぎれていた夜鳴草の栽培方法を古文書で見つけ、イヴェリオの執務室に残したのは少し前のこと。参考文献までつけておいたけれど、信じてもらえるかどうかは自信がなかった。
 イヴェリオが、迷うことなく実験を始めてくれてよかった。
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