ゆびさきから恋をする
「……すみませんでした」

 いろんな意味を込めて謝ると、久世さんがジッと見つめてくる。

「今までは言えないこともあって我慢してたのかもしれないけど、もう溜め込むな。これからは言って?」

 さらっと頬を撫でられてカッと顔が熱くなった。

「できる限り聞く。なんでも言ってほしい」

 そんな胸をフワフワさせるようなセリフ、真顔で言うってなに? これ以上ドキドキさせられたら色んな意味で持たない。

「……はい」

 ドキドキが声から伝わりそうだ。絞り出すようになんとか返事して頷くとフッと笑われた。

(イケメンの破壊力。こ……殺される!)


 家に帰ってからもなんだか信じられなかった。

 何度も何度も思い返しては胸をドキドキさせていた。泣いてしまったこと、今まで溜め続けていた気持ちを吐き出せたこと、それを受け止めてもらえて抱きしめられたこと。優しいキスも触れるゆびさきも、どれも生々しく記憶に残ってるから身悶えた。

 好きと伝えてしまった。その時ふと気づくのだ。

(あれ? それでどうなるの?)

 久世さんはどう言ったっけ? 遊びや慰めでキスはしないと言ってくれた。私に結婚や彼氏の有無を聞くということは自分にもいないという意味でいいのか?

(ん? 私、好きとか付き合おうとか何も言われてないよな?)

 私も好きと言ったけれど付き合ってくださいも何も言っていない。

(んん? だからどうなるの?)

「まだ……久世さんの下で働きたいです」

 私はそう言った、それはつまり……。

(部下でいたいです、になるのかな)

 だからつまり、上司と部下の関係のまま?

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