ゆびさきから恋をする
 そりゃ毎日顔を合わせるけども! それにしたってなんか……悶々してきてついでとばかりにぶちまける。

「私も、その……部下でいたいって言っちゃったから。だから……」

「部下だけど、彼女だよね? そう思って接してた。携帯出して」

(彼女!)

 いろいろサラッと言い過ぎじゃないかな? とは思うがもう言われるままだ。携帯を取り出すと流れるように連絡先を交換されて、私の携帯画面に久世さんの名前が登録される。

「一切上司の立場で話してないぞ、あの時。めちゃくちゃ私情でぶつけてたけどな、俺」

「へ?」

「焦ったね。辞めたいって言われたときは。バカみたいにムキになって、どうやって引き留めようかって必死だったわ」

「そう、なんですか?」

 コクリと頷く姿がなんだか可愛いとか思った気持ちは内緒。

「……忙しくてあんまりかまってやれないかもしれないけど、寂しくなったらちゃんと言って?」

 きゅっと手を握られると椅子と椅子がぶつかって久世さんの足に挟まれたと思ったら、そのまま抱きしめられた。

「その時はいつでも抱きしめるから」

 ボンっと顔から火が出たかと思った。

 固まる私の身体をゆっくり剥がして頭を優しく撫でながら見つめられると余計固まる。

 距離、距離が……近い。
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