ゆびさきから恋をする
 久世さんがもしかしなくても、ちょっとだけヤキモチみたいなものを抱いてくれているのかもしれない。そんな自惚れにくすりと笑ってしまう。だって付き合ったとなったって久世さんが私を意識しているなんて思わなかったしいつも私ばかりがドキドキしている。そう思っていたから。

「なに?」

「……え? いえ。あったかいなって思って」

 そう呟いたらふわっと腕の力が緩んで、温かな掌に頬を包まれて見つめられた。

「……」

 見つめられてドキドキ……これはなんだかそういう雰囲気? 

 これは……キス? 

 経験値の低い私でもわかるような甘い空気。そんな気配を察知した私はときめき出す胸の鼓動を感じながらうっすらと瞳を閉じかける。ゆっくりと、久世さんの息が肌に触れてきて……。


 ――バァンッ!

 いきなりの爆音に私の心臓も跳ね上がった。
 
 音の正体は実験室の入口ドア。そのあとにバタバタと駆けてくる音がして条件反射で久世さんの顔を押しのけた!

「ひゃあ!」

「って!」

 間一髪! ウッチーが戻ってきた。
 
「ちぃちゃん! ごめん! タオル持ってきたよ! って、え? なに?」

「ななな、なんでもぉ!? タオルありがとう!」

 取り繕うみたいにお礼を言ったらウッチーは首を傾げつつもタオルを差し出してくれて久世さんは……。

「ちっ」

(舌打ち! 態度悪っ!)
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