ゆびさきから恋をする
 頑張りたい気持ちはある、応えたい気持ちもある。

 でも、やるせない。頭がついていかない。

 今までなら割り切れていたのに、心の奥で飲み込めていたことはいっぱいあるのにどうしてだろう。

 苦しいんだ、胸が締め付けられるような痛みが襲ってくるのだ。

 今だから割り切りたい、なんとか消化したいだって――。

 この人の下でもっと仕事がしたいのに……。


「……はい」


 無視できなくてなんとか返事をした。返事とは裏腹に胸が苦しかった。

 仕事を与えられて自分が久世さんにとって特別な何かになったみたいな気になっていた。

 でも違う。

 私はただの派遣社員でただの部下。
 久世さんにとっては仕事をさばくただの駒にすぎない。それをもっとちゃんと自覚しないと今以上に辛くなる。


「菱田ちゃん」

 名前を呼ばれて顔を上げると、珍しい人が実験室に顔を出した。


高宮(たかみや)さん。お疲れ様です」

 品質管理部の高宮さんだ。
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