ああ、今日も君が好き。



インターホンの向こうから「どちら様ですか」と可憐な声が聞こえた。



この声、間違いなく見吉さんだ。



でも…、



「東都急便です。お届け物をお持ちしました」

「はい、今向かいます」



「悪いね兄ちゃん」と言って、暑苦しい笑みを浮かべる配達の人。



……いやいや、何が!?

てか、悪いと思ってんなら割り込むなよ!先行くなよ!

インターホン押してくれるのは有難いけど、せめて俺に譲ってよ!



軽快な足音に、俺はヤバいと思い咄嗟に身を隠した。



……って、何もヤバくないだろう俺!

これじゃあ俺が見吉さんのストーカーみたいじゃん!

マジもんの変態みたいじゃん!サーヤに言い返せねぇよ!



「こちらに判子をお願いします」

「はい」

「ありがとうございました」

「ご苦労様です」



そっと物陰から顔を出して彼女の横顔を見つめると、彼女は段ボールを抱えながら嬉しそうな顔をしてドアの向こうに消えてしまった。
もう少し見吉さんを見ていたかったと言う残念な気持ちと、インターホンを押さなければならない憂鬱な気持ちが相まって項垂れていると、不意に肩を叩かれて振り返った。



「兄ちゃん、頑張れよ!」

「だから何をだよ!?」



そう言い残して配達の人は仕事に戻って行った。
主要キャラ並みのキャラの濃さと、あの暑苦しい笑顔に見透かされたと思うと無性に腹が立つ。
そもそもどこから湧いて出て来たのか分からない。
ああ言うキャラって普通はもっとアシストしてくれても良いんじゃないの、と疑問に思ったが考えても仕方ない。


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