ああ、今日も君が好き。
「柴田くん」
名前を呼ばれて勢い良く顔を上げると、不意に見吉さんと目が合った。
突然のことに心臓が飛び出そうなくらい吃驚して息を飲んだ。
「な、何…?」
「昨日大家さんから電話があって急いで帰ったけど、大丈夫だった?」
「昨日?……………あっ」
忘れてた。
「何々その反応?やっぱり何かあったんでしょう?」
「いや、別に大したことじゃ…」
「柴ケンのくせに隠し事?さては女関係だな」
「んなわけねぇだろう!」
「ムキになるところが益々怪しい…」
「だからそんなんじゃねぇんだよ。もっと個人的なことだっての」
「個人的なこと?男女のいざこざじゃないの?」
「違う」
「それってあたし達にも話せないこと?」
「いや、話せなくはないけど…。皆には関係ないことだし、特別面白い話でもないしさ」
「面白いか面白くないかは後で判断するよ。だから話して」
「……何でお前はそんな楽しそうなんだよ?」
「他人の不幸は蜜の味ってことよん」
「お前な…」
「でも皆心配してたのは本当だよ。特に雪緒はね」
「ちょっとリサ!?」
「え、見吉さんが?」
それは何かの間違いでは?
見吉さんが俺如きの心配をするとは思えないんだが。
「うふふ、だって本当のことじゃない。雪緒ってばね、柴ケンが急いで帰った後、自分も後を追って帰っちゃったんだよ。可笑しいでしょう。後で冷静になって戻って来た時は笑いが止まらなかったよ」
………うっそん。
「だ、だって、心配だったから…」
恥ずかしそうに俯くも、チラッと俺と目を合わせる見吉さん。
可愛い………じゃなくて、どうやら村瀬さんの言ったことは本当らしい。
あの見吉さんが俺のことを…。
ヤバい。
不謹慎だけど、マジで嬉しい。
「だから、その……柴田くんが困ってるなら相談に乗りたいと思って…」
「見吉さん…」
ここまで言わせて何も話さなかったら男が廃る。
本当は自分のことだから自分で解決しなきゃいけないんだけど、話さないことで皆に余計な不安を与えるんだったら話さないわけにはいかないよな。
「じ、実は…―――」