黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「このまま永遠に白い結婚だったら……」

 形だけのお飾り皇后でも、神様は許してくださるかしら。
 もうそうではなかった場合どうなるのだろう。考えたら、そら恐ろしくなる。
 
 だめだめ。何もしていないうちから悪いことばかり考えてはいけないわ。

 自分を叱咤したところで朝食ルームへとたどり着いた。

 従僕に開けられたドアから足を踏み入れた私は、目に飛び込んできた人の姿に思わず叫びそうになった。

 陛下だわ!

 うっかり声に出しかけたが、ぎりぎりのところでのみ込んだ。

 私ったら、どうして今日に限ってゆっくり来てしまったの⁉

 最初の頃は決められた時間の二十分前にはテーブルについていたのに、陛下が朝食に現れないことが続いた末、近頃では五分前着席が普通になってしまっていた。

 油断大敵ってこのことだわ!

 動揺をひた隠しにし、ドレスをつまんで膝を折る。

「おはようございます、陛下。遅くなりまして大変申し訳ございません」
「別に構わない」

 久々に交わした言葉はそっけなく、私がいてもいなくても本当にいいのだと伝わってきて、胸がずきんと痛んだ。

 とにかくこれ以上皇帝を待たせるわけにはいかない。私は速やかに席に着いた。

 そろって食事を始めたのはいいものの、会話のきっかけがつかめず食器の小さな音がいつもより大きく聞こえる気がする。
美しい絵付けの食器やくもりのないグラスは、シャンデリアの明かりできらめき、よく磨かれた銀色のカトラリーには繊細な意匠の燭台が映り込んでいる。
 三か月間毎日見ていた景色なのに、まるで全然違う部屋に来たようだ。

 皇帝との初めての食事に緊張しないとわけではないが、幸い行儀作法に関しては五歳の頃からみっちり叩き込まれている。
 一般の聖女ならそこまで厳しくはなかっただろうけれど、私は大聖女であり教皇の養女だ。貴族の邸宅に訪問することも少なくないため、貴族並みの教育を与えられていた。他の聖女達よりすべきことが多くて大変だと思うこともあったけれど、今となってはありがたい。
< 10 / 114 >

この作品をシェア

pagetop