黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「誰だ、聖女の嫌いなものを出したのは。すぐに料理長を呼べ」

 ぎろりと睨まれた給仕係が真っ青になって「ただ今!」と部屋を出ていこうとする。

「待って! それには及びません! 大丈夫です、好き嫌いなどありません。みなさまの尊い労働によって得られた食事ですもの、出されたものはなんでもおいしくいただきますわ!」

 たかがちょっと苦いくらいで嫌だと言っていては、お腹を空かせて泣いていたこども達に申し訳が立たない。皿の上の残り半分にフォークを突き刺し、即座にパクリと口に運ぶ。

「とっ……とっても健康によさそうなお味ですねっ」

 あまりの苦さに涙がにじむが、気にせずにこりと微笑んでみる。
 陛下は相変わらず無言のままだ。でも心なしか目もとが柔らかい気がする。私の願望かもしれないけれど。

 とにかく食べ終わって陛下が離席する前に次の一手を打たなければならない。ここを逃したら、次に陛下と顔を合わせるのはいつになるのかわからないのだから。

「あ、あの、陛下……」
「なんだ」

 ドドドッと心臓が早鐘を打つ。
 勇気を出すのよ、オディリア!

「今日、どこかでお時間をいただけないでしょうか」
「なぜだ」

 なぜ⁉ 

 初夜のことを謝るのが目的だが、朝っぱらから――しかも食事中に気軽にできる話題ではない。えっと、と頭をフル回転させる。
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