黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
***

「エルマ、どこかおかしいところはない?」
「ございません」
「リボンは歪んでない?」
「大丈夫です」
「髪、やっぱり下ろしたほうがいいかしら」
「直しますか?」
「……やっぱりこのままでいいわ。せっかくきれいにしてもらったのだもの」

 約束の時間までまだ一時間はあるというのに、そわそわしてしまう。窓の外を見ると、心地よい晴天が広がっている。

「帽子はあった方がいいかしら。それなら髪は――」
「オディリア様、少し落ち着かれてはいかがですか」
「そうね」

 陛下が寄こした侍従からは、三時に中庭のカゼボに来るようにとの伝言を預かっている。

 今度こそ失敗はできない。気持ちを整えるために祈りを捧げることにし、しばらくの間ひとりにしてもらう。
 大聖女として帝国の安寧を祈るのも、私の大事な役目のひとつ。毎日朝夕の礼拝はきちんと聖堂で行うが、別にそこでないといけないわけではない。大事なのは心を込めて祈ることなのだ。

 神様、女神様。ルナルド陛下の御代が平らかなものになりますように。そしてこの散歩が私達夫婦の仲を深めるものになりますように。

 本来なら聖女は私利私欲のために能力を使ってはいけない。女神から与えられた力は民のためのものだからだ。
 けれど、もしかしたらこれが帝国の運命を左右する大事となるかもしれないのだ。全帝国民のためだと自分に言い聞かせながら、必死に祈りを捧げた。

 祈りに集中していたために気づいたら待ち合わせの三十分前だった。
 今度こそ陛下を待たせるわけにはいかない。
 私はエルマを伴い、庭園へ向かった。

 それなのに――。
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