黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「どういうことだ」

 低い声で問われ、唇を噛みしめる。

 この婚姻は神が決めたものだ。私たち二人の意思ではない。それなのに『私を皇后にしてよかったのか』なんて聞かれても、陛下だって困ってしまうだろう。『だめだ』と言えるなら初めからそうしている。

「いえ、なんでもありませ――」
「おまえこそどうなんだ」
「え?」

 振り返って息をのんだ。いつの間にか陛下がすぐそばに立っていた。
 私よりも頭ひとつ分以上高いところにある整った顔は、相変わらず無表情で、何を考えているのかよくわからない。

「内心では、俺のような皇帝に嫁がされるなんて不幸だと嘆いているのではないか?」
「そんなことはありません!」

 たしかに神託によって決められた結婚ではあるけれど、決して陛下のことを嫌だと思ったことはない。むしろ、なぜだかよくわからないけれど、陛下にもっと近づきたいと望んでいる自分がいる。

「周りの者たちがなんと言っているのか知らないのか? 敵国の者だけでなく、父帝と兄を殺して玉座を手に入れた死神皇帝だと」
「死神だなんて……」

 勝利の立役者に対してあんまりだ。

 たしかに終戦前後には帝国内に不幸が続いた。前皇帝が逝去し、それからひと月も経たないうちに元皇太子まで倒れた。
 私も駆けつけて治癒に当たったが、元皇太子は一命を取りとめたものの息をしているだけの廃人となってしまった。

 聖女の治癒は、患者本人が持っている生命力を増幅することで傷病を癒す。つまり患者自身に生きる力がなければ助けることはできないのだ。聖女の力は決して万能ではない。

「皇帝を死に、皇太子を廃人にしたのは、俺の呪いだそうだ」
「そんな……」
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