黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「だから待てと言ったんだ」
「申し訳ありません……」

 ため息混じりで叱られて、謝りながらうなだれる。すると突然、手首をつかまれた。え?と顔を上げると同時に、陛下は私の指をパクリと口にくわえた。

「……っ!」

 絶叫が声にならない。指先を包む生温かい感触に、頭が真っ白だ。
 息をのんだまま固まっていると、指先をぺろりと舐められた。

「ひゃっ」

 反射的に手を引いたがビクともしない。放してと言おうと口を開いた瞬間、きつく吸いつかれた。

「ん……っ」

 ゾクッとした痺れが腰からはい上がり、足から力が抜けて崩れ落ちそうになる。いつの間にか腰に回されていた腕に抱き寄せられた。
 陛下が私の指を解放する。

「大丈夫か?」

 大丈夫ではありません!

 声を大にして言いたいのに、ちいさくかぶりを振ることしかできない。ほぼ瀕死の状態だ。

「放っておいて化膿したらいけないからな」

 どうやら傷を心配してくれたらしい。ここはお礼を言うべきかもしれないけれど、舐めるのはやめてほしい。

「傷なら自分で治せますので」

 言いながら指を隠すように後ろでギュッと握る。陛下の舌や唇の感触が焼きついたように離れなくて、痛みなんてとっくの昔に忘れてしまった。そもそもこれくらいの傷では自分に癒しの力を使うことはない。

「聖女の力か……」

 陛下が感心したようにつぶやく。

「戦争中はずいぶん助けられたな。改めて礼を言う」

 思いがけないお礼の言葉に目を見張った。嫌われているとばかり思っていたので、うれしくなる。けれどすぐに申し訳なさがこみ上げた。

「もったいないお言葉でございます。が、それは私以外の聖女達におっしゃってやってくださいませ」

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