黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「皇太子殿下のことでは力及ばず、心より申し訳なく思っております」

 皇太子を助けることできなかったことは本当に残念だ。

「ここぞというとき役に立たなくて何が大聖女だ。それなのに皇后の座まで手に入れるとは……血統も美貌も兼ね備えたカリーナこそ帝国の母にふさわしいのに。よりにもよってこんなどこの馬の骨ともわからぬ平民が皇后とは……世も末とはこのことだ」

 すべて侯爵の言う通りで、私が言えることは何もない。

「神託もあやしいものだな」

 私の肩がピクリと震えた。ゆっくりと顔を上げる。

「それはいったいどういう意味でしょうか」
「教皇が仕込んだのでは、と」
「っ!」

 言うに事欠いて、教皇様を疑うなんて。

 私が聖女として不甲斐ないことも、皇后にふさわしくないこともその通りだ。けれど、それと神託は別の話。誰よりも強い神聖力を持つ教皇だけが、神の声を受け取ることができる。それを人々に伝えるのが彼の役目だ。
 神の言葉をいつわるのは、神に背くのと同じこと。だから決して嘘はつけない。
 そのことをブルックリー侯爵が知らないはずはない。

「いくら侯爵といえど、教皇様をおとしめるようなご発言はお控えください」
「なっ」

 私が言い返すとは思っていなかったのか、驚いて目を見開いた後、みるみる顔が赤くなっていく。

「この小娘が……」

 侯爵が憤怒の形相で私を睨みつける。怒鳴られるのを覚悟して両手をギュッと握りしめたとき、

「お父様、もう行きましょう。わたくし疲れてしまいましたわ」

 娘から不機嫌そうに言われた侯爵は、ふんっと鼻息だけ吐き「今に見ておれ」と言い残して、挨拶すらせずに去っていった。
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