黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
私室に戻った私は、まず先触れの使者へ預ける手紙を書いた。
陛下からの使者がいつ来るのかわからないけれど、できるだけお待たせせずに返事を出すことが『陛下の訪れを歓迎する』意となる。
中身の様式は決まっているため、私はお手本通りに書くだけなのに、緊張するせいでやたら時間がかかってしまう。
前回は何度も失敗し、紙くずの山を作ってしまったけれど、今回はどうにか二度目で完成させることができた。
安堵の息をついた直後にやってきた使者は、陛下からの手紙と私の書いた返事を引き換えるようにして、すぐに戻っていった。
手紙と一緒に贈られたバラの花束をエルマが花瓶にいけてくれている間、私はソファーに座って陛下の手紙をあらためて読み直す。
どうやら陛下がこちらを訪れるのは夜になるようだ。仕事が終わり次第こちらに向かうので、自分に構わず先に食事を済ませておいてほしいとあった。
陛下……本当にお忙しくてらっしゃるのね……。
もしかしたらさっきの散歩のせいで公務が押してしまったのかもしれない。多忙の中誘いに応じてもらえてうれしい反面、仕事の邪魔をしてしまったことは心苦しい。
だけどそれも今日までのこと。
『皇帝と大聖女が結ばれた』という事実さえあれば、帝国の平和が約束される。多少のわがままには目をつむってもらうしかない。
明日からはおとなしくお飾り皇后として分をわきまえます。だからどうか今夜だけは……。
「オディリア様」
呼びかけにハッと顔を上げた。
「こちらでよろしいでしょうか」
エルマは言いながら花瓶を私の前のローテーブルへ置いた。飾り気のない白磁の花瓶にローズピンクがとてもよく映えている。
「とても素敵だわ。ありがとう、エルマ」
花の高さや葉のバランスなど、私がやってもこんなに美しくならない。さすがは伯爵令嬢だと感心する。
陛下からいただいたバラをゆっくり眺めていたかったけれど、入浴の準備が整ったとメイドが知らせに来たため、ソファーから立ち上がり、バスルームへ向かった。