黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~

 入浴後、用意された夜着を見て、レースが使われたふんわりしたデザインにほっとした。夜着に袖を通した後、数人のメイドから髪を乾かされたり化粧水を肌に叩き込まれたりする。

 腰まである真っ赤な髪は、片方に寄せて緩く三つ編みにしておく。くせ毛なので時間が経つと広がったり絡まったりするのでそれを防ぐためだ。

 すべての身支度が済んだときには、入浴から二時間が経っていた。

 部屋に戻ると、ソファーの前に食事が並べられていた。

 ひと口サイズのサンドイッチから、チーズの乗ったクラッカー、クッキーにカップケーキ、果物まである。エルマに頼んでいた通り、つまみやすい軽食ばかりだ。

「どれもおいしそうね。でも、ごめんなさい、今はあまり食欲がないの」

 せっかく用意してもらったのに心苦しいけれど、喉を通りそうにない。入浴を済ませて夜着に着替えたことで、『いよいよだ』と緊張感ばかりが高まっている。

 すると、普段あまり感情を表に出さないエルマにしてはめずらしく、眉根を寄せた。

「少しは何かお口に入れませんと、お体が持ちませんよ。今夜は長くなるかもしれませんし」
「長く……」

 エルマが言わんとすることがわかった途端カッと顔が熱くなった。
 今そんなことを言われたら、目が回って倒れてしまいそうだ。

「せめてこちらのお茶だけでもお飲みください。気持ちを落ち着かせる効果のあるハーブティをご用意させましたので」

 給仕係のメイドがティーポットからカップに注ぎ、私の目の前に置いてくれた。

「ありがとう」

 お礼を言ったものの、今ティーカップを持ったら、手が震えて落としてしまいそうだ。
 火傷をしないよう少し冷めてから飲もう。

「ごめんなさい。しばらくひとりにしてほしいの」

 エルマが心配そうにじっとこちらを見た後、「承知いたしました」とメイドたちを連れて部屋を出て行った。

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