黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 クッションにため息を沈める。ゆっくりと顔を上げたら花瓶に飾られた花束が目に入った。

「花束を下さることってことは、嫌われているわけではない……のよね?」

 手を伸ばしてピンクの花びらをそっと撫でたとき。

「痛っ!」

 針で刺したような痛みを感じて勢いよく手を引いた。指先にぷっくりと赤い血が盛り上がっている。どうやら取り損ねていた棘に触れてしまったようだ。

 これくらいなら癒しの力を使うほどでもないと、血がにじんでいるところをパクっと口に含んだ瞬間、陛下の行動が一瞬でよみがえった。

 唇の柔らかさ。舌の感触。ごつごつした大きな手。

 これって……!

 昼間と同じ指だと気づき、ボワッと火がついたように顔が熱くなった。

 湯気が立ちそうな頭を必死に左右に振り、平常心に戻ろうとティーカップに手を伸ばす。お茶はほどよく冷めていたので、カップをあおり一気に飲み干した。
 ハーブの甘い香りの後、スーっとした感覚が喉を滑り落ちていく。

「ふう、おいしかっ……うっ」

 突然肺がギュッと押し潰されたように苦しくなった。手からカップが滑り落ちる。ガチャンと床にぶつかった音が聞こえた瞬間、全身が炎に包まれたかのように熱くなった。

 息ができないほどの苦しさに、声すら出せず床に倒れる。

 いったい何が……。

 そう思ったのを最後に、意識がプツンと途切れた。



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