黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
目を開けると、視界に深緑色の絨毯が広がっており、割れたカップが転がっていた。長時間眠っていたかのように頭がぼんやりとする。
私……気を失っていたの?
ズキズキと痛む頭を手で押さえながら、ゆっくりと上体を起こした。
「え……⁉」
目に映る景色がおかしい。すべての家具がやたら大きいのだ。
ローテーブルの足は長く、暖炉のマントルピースや壁にかけた額縁も、すべてが高い場所にある。
「どういうこと⁉」
慌てて立ち上がったが、視界がかなり低い。まるで部屋が急成長したみたいだ。
ふと横を見た瞬間「きゃっ!」と小さな悲鳴が出た。壁のところに見覚えのない女の子がいる。三歳か四歳くらいだろうか、緑色に近い淡褐色の瞳で驚いたようにこちらを見ている。
「あなたはだれ?」
思わず口にしたら、彼女も同じように唇を動かした。
「何? 聞こえないわ?」
女の子のほうに近づきながら手を伸ばす。相手も同じように手を延ばしてきた。指先に触れる――次の瞬間、ひゅっと喉が音を立てた。触れているのは冷たく硬い鏡だ。
「わ……たし……なの?」
絞り出した声がかすれている。
くるくると波打って肩につく髪は、まるで昼間のバラのように淡いピンクがかったブロンドだ。ただ四角い布をつなぎ合わせただけのような真っ白い服を着ている。
「うそでしょ……」
両手で自分の顔をペタペタ触ると、鏡の中の幼女もまったく同じように動く。
夢でも見ているのかと思い、自分の顔をつねってみた。
「痛っ!」
鏡の中の幼女も痛がった。