黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 落ち着いて、オディリア。まずこうなったきっかけを思い出さなきゃ。
 ハーブティを飲んだ後、突然息ができないくらいの激痛に襲われて……そうよ、そのあと倒れたんだわ。もしかして、あのお茶に毒が……?

 誰かが自分を殺そうとしたのかもと思ったら、ぞっとした。
 風邪ひとつ引いたことがない健康優良体なので、心臓や肺の疾患は考えにくい。
 もし本当に私を殺そうとする人がいるとしたら、もしかしたらまだ近くにいて、私がちゃんと死んだかどうか確認に来るかもしれない。

「ど、どうしよう、早く逃げなきゃ!」

 そう口にしてハッとする。

「どうやって?」

 自分はオディリアだと認識している私はこうして動くことができているけれど、眠ったままの体は当たり前だが動かない。

 私が体に戻れば動けるようになる?

 戻る方法なんて皆目見当もつかないけれど、何もしないでじっとしているよりはましかもしれない。

「よし!」

 試しに力なく床に落ちている手を両手で握り、目を閉じた。

 母なる女神よ。どうか私を元の体にお戻しください。

 部屋はシンと静まり返り、体にもなんの反応もない。
 いつもなら祈りを捧げるときには体の中心に神聖力が集まってくるのを感じるが、今はそれもない。

 もしかして私……神聖力を失っているの⁉

 こわごわ目を開いたら、やはり元の体には戻っていなかった。横たわる私の体は、薄いベールのような光に包まれているだけだ。

「どう……して……」

 このままでは一生戻れないかもしれない。それどころか、本体の自分は見るからに弱っていて、体を覆っている神聖力の光もいつまでも持つようには思えない。

「誰かっ……」

 助けを呼ぼうと声を必死に絞り出すが、震えてちいさな声しか出ない。死への恐怖で涙がじわじわ盛り上がってくる。

 泣いちゃだめ! 泣いてもどうにもならないんだから!

 袖でごしごしと目元をぬぐい、大きく息を吸う。そのまま息を止めて、勢いよく立ち上がった。

「待ってて! 今助けを呼んでくるから!」

 横たわる自分へ声をかけて部屋から飛び出した。

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