黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 くそっ……どういうことだ!

 思わず心の中で悪態をつく。『おまえはそれでも宮廷医か!』と叱責したいところだが、オディリアの枕もとで騒ぐわけにはいかない。
 宮廷医の診断をそのまま信用するわけではないが、ひとまず今夜はこのまま様子を見ることにする。

 念のため服毒の可能性を考えて、彼女が倒れていた状況を調査することにした。食器や食べかけのものはもちろん、部屋の至る所を残さず調べるように指示した。

 人が出入りする中、オディリアを寝かせておくことはできない。俺はベッドに横たわる彼女の背中とひざ裏に腕を差し込み、できる限りそっと抱きあげた。

「へ、陛下……皇后様をどちらへ⁉」

 慌てた様子の侍女頭の声に「俺の部屋に連れていく」とひと言告げ、きびすを返して部屋を出た。


 オディリアを抱いて寝室に入った途端、ベッドの上を見て思い出した。

「そうだ……こいつがいたんだったな」

 幼女のことをすっかり忘れていたのだ。

 幸いベッドは大人三人が寝ても十分なほどの幅がある。女性と幼児なら狭苦しいということはないだろう。幼女の隣にオディリアを寝かせ、ほっと息をついた。
 原因不明で眠るふたりが俺のベッドにいる。これはいったいなんの因果だろうか。
 
 本当なら今頃オディリアの部屋で、昼間聞きそびれたことを尋ねているはずだった。
 
〝命の息吹に女神の祝福を〟

 彼女がバラ園で癒しの力を使ったときに口にしていた呪文。それは俺が死の淵で聞いた言葉を思いおこさせた。

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