黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~

 半年前。
 長きにわたる隣国との戦いの末に、俺はとうとう相手方の王を打ち取った。

 次の瞬間、いっせいに味方兵から囲まれた。

『おまえ達、これはいったいどういうことだ』

 こちら剣を向けてぐるりと囲む兵たちを睨みながら、俺は問うた。
 最初から勝利直後のこのタイミングを狙い、俺を戦死したと見せかけて暗殺するつもりなのだ。

 この計画には必ず首謀者がいる。
 真っ先に脳裏をよぎったのは、腹違いの兄である皇太子だ。

 皇太子は幼い頃から何かにつけ俺に因縁をつけ、執拗な嫌がらせをくり返してきた。ありもしない嘘を並べて俺の悪評を流したり、自分がやった失敗を俺のせいにしたり。
 それだけでなく、俺が気に入ったものがあれば必ず取りあげた。

 物ならまだいいほうだ。飼っていた小鳥、侍従やメイド。俺が少しでも気に入るようなそぶりをした相手は、皇太子が自分のものにするか、ぼろ雑巾のようにして捨てるか。

 結果、俺は周囲の者を遠ざけるようになった。

 十歳のときに母が亡くなってからは、決まった侍従やメイドは置かず、身の回りのことはすべて自分でやった。
 自分の代わりに誰かが痛めつけられるのを見るくらいなら、独りきりのほうが何倍もましだ。

 そうして成人後、激化しはじめた隣国との戦争に、帝国軍の指揮官として赴くこととなった。それだってあの男が取り巻きの貴族を使って皇帝に進言させたということはわかっている。

 だが別にそれでよかった。面倒な政権闘争やあの男からの執拗な嫌がらせの中で生きるより、戦場の方が自分に合っている。
父である皇帝に、勝利を挙げて戻ったあかつきには、帝都から遠く離れた辺境に領地をもらう約束を取りつけていた。

 穏やかな暮らしを手に入れるまであと少し――。

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