黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 琥珀色の瞳にじっと見つめられ、夜着の生地の薄さを思い出した。装飾のない真っ白なシルクのそれは、とても着心地がよい。けれどその反面、しっとりと身にまとわりついて体のラインが出てしまう。陛下の目にそれをさらしていると思うと、今さらながら羞恥心がこみ上げた。

 顔を背けたら、首すじから鎖骨にかけてツーっと指でなぞられる。

「んっ」

 ゾクッと痺れるような感覚がして、鼻から抜けるような甘い声が漏れる。
 こんな声を出して、ふしだらな女だと思われたらどうしよう。

 陛下に触れられるたび、これまで感じたことのない感覚が全身を支配する。何も考えられなくなり、自分が自分ではなくなってしまいそうな恐ろしさが込み上げてくる。
 熱く潤んでいくまぶたをギュッと閉じた時、陛下の手が膨らみに触れた。

「いやっ!」

 反射的に陛下の手を全力で払いのけてしまった。

「あ……」

 天蓋の中がしん、と静まり返る。
 恐る恐る視線を上げると、陛下が眉根を寄せて厳しい顔つきをしていた。
 一気に血の気が引く。

「もっ、申し訳ございません!」

 頭を下げたけれど、陛下は無言でベッドから下りていく。

「陛下!」

 伸ばした手が空を切った。

「所詮これは神託という名の政略結婚だ。必要以上に俺に関わるな」

 こちらに背を向けたままそれだけ言うと、陛下はドアのほうへと歩いていく。

 お待ちください! 私は決して嫌がってなどおりません!

 そう言いたいのに、喉が固まっているかのように声が出せない。
 ひと言も発することができないうちに、陛下は部屋から出て行ってしまった。

 私はそれから長い間、ベッドの上でひとり呆然としていた。

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