黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
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 陛下との結婚から早三カ月。
 あれから一度も陛下と閨を共にしていない。それどころかろくな会話もしていない。顔を合わせるのはもっぱら宮廷行事ばかりである。

 皇帝と皇后は不仲だといううわさは、もう宮廷中に知れわたっているだろうか。噂は教皇庁に届き、ひいては神の元にまで届いていたら……。そう思うと夜も眠れなくなる。

 この結婚は、新皇帝即位に際して下された神託によるものだ。

『神が選びし皇帝と〝女神のいとし子〟が結ばれることで、ヴィーダー帝国の繁栄は続く』

 神と女神の夫婦神を信仰するヴィーダー帝国では、神聖力を授かった男性は『神官』に、女性は『聖女』となり、教皇庁に属することとなる。

 聖女の祈りは五穀豊穣や安寧をもたらし、傷や病を癒すことができる。

 私は物心つく前に始まった隣国との戦争で両親を失い、孤児院に引き取られた。そして五歳くらいの頃、突如治癒力を発現させた。

 すぐに聖女宮から迎えが来て、通常の何倍もの神聖力を持つことが判明した。どうやら私は、数百年に一度、稀代の神聖力を持って生まれる大聖女――〝女神のいとし子〟らしかった。

 つまるところ神託は、『新皇帝ルナルドと大聖女オディリアが夫婦となることで、帝国が続く』と言っているのだ。

 私が皇帝に嫁ぐことで、戦争のない平和な世の中が続くというのなら、喜んでそうしよう。これがきっと私が女神から力を授かった理由なのだ。

 冷酷と噂される軍神帝に嫁ぐことにまったく不安がなかったと言ったらうそになる。けれど私なりに色々と考え、神託を受け入れて王宮入りした。

 ほとんど人となりを知らない相手と閨を共にしなくていいと言われてほっとする反面、本当にこれでいいのかと何度も自問自答している。

 形式上の結婚が〝結ばれる〟ことになるなら何も心配はいらない。けれど、そうでなかったらどうなるのだろう。私達はまだ本当の夫婦ではない。
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