黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「わかった」

 陛下の声にビクッと肩が跳ねる。最後通告を受けるのだと身構えた瞬間、頭の上にポンと手が乗せられた。

「おまえは今日から『ロゼ』だ」
「へ?」
「名前がないと不便からな」

 思わず目をぱちくりしていると「嫌か?」と顔をのぞき込まれる。慌てて顔を左右に振った。

「さっそくだがロゼ、そろそろ朝食の時間だ」
「え、あ……わっ」

 むくりと起き上がった陛下に抱え上げられる。いきなり高くなった視界に驚いて、彼にしがみついた。

「何が食べられるかわからなかったから、適当に用意させたぞ」

 言いながらドアを開け、隣の部屋へと入る。広々としたダイニングテーブルにところ狭しと様々な料理が並べられていた。

「わぁ……」

 鮮やかな黄色のオムレツ、みずみずしいレタスのグリーンサラダには真っ赤なミニトマトがのっており、マッシュポテトやポタージュスープもある。他にもカットフルーツやゼリーなどのデザートも数種類あった。
 見た瞬間、お腹がグーっと盛大に音を立てた。

「あ……」

 そういえば昨日は昼からほとんど何も口にしていない。陛下との散歩や夜の訪れに興奮と緊張の連続で、あまり食欲がわかなかったのだ。最後に口にしたのはリラックス効果のあるハーブティだけだ。
 思い出したせいか、腹ペコ虫が執拗に空腹をアピールしてくる。

 もう……! そんなに鳴かなくてもいいってば!

 陛下が耐えきれないとばかりに、くつくつと肩を震わせた。
 
 は、恥ずかしい……!

 穴があったら埋まりたいのに、埋まるどころか陛下の腕の中から抜け出すこともできない。

「食欲があるのはいいことだな」

 陛下は私を椅子に座らせた後、自分も隣の席に腰を下ろした。

「好きなだけ食べたらいい」

 無表情だけれど声は柔らかい。私はおずおずとフォークとナイフに手を伸ばした。
 ――が、すぐに新たな問題に直面した。
 
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