黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
朝食が済んで寝室に戻ると、子ども用のドレスが用意されていた。まるであつらえたかのようにサイズがピッタリだ。
白いフリルのついたピンク色のドレスはかわいらしく、今の髪色ともよく合っている。スカートは腰からふわりと広がってはいるけれど、くるぶし丈なので意外と動きやすい。裾を踏んで転ぶことはなさそうだ。
そういえばどうして私の目と髪の色が変わってしまっているのだろう……。
姿見に映る自分を見ながら改めて不思議に思う。子どものころから赤い髪だったので、髪色が変わるだけでまるで別人みたいだ。今の自分を見てオディリアだと気づく人はいないだろう。
「ロゼ、着替え終わったのか」
陛下が寝室に入ってきた。
「へーか。素敵なドレスをありがとうございます」
きっとこれがさっき陛下の言っていた『ご褒美』なのだろうと思いながら、ドレスの裾をつまんでお辞儀をする。
「ああ。よく似合っている。バラの精みたいだぞ」
「っ……ありがとうございましゅっ」
不意打ちの賞賛に焦ったせいで、語尾がもたついた。どうやら慌てると舌がうまく回らなくなるようだ。中身は十九歳でれっきとした成人女性だけれど、肉体は幼児。以前とは同じようにいかないことがあるのも当然だ。
気をつけなければと自分に言い聞かせているところに、突然陛下が私の前で片膝をついた。突然同じ高さになった目線に驚いて目を見張る。
「ロゼ。おまえはこれからどうしたい。自分の名前も親もわからないようだが、どこか行くあてはあるのか?」
琥珀色の瞳に正面から見つめられ、胸がぎゅっと苦しくなる。
私の居場所はここです! そう言いたくてたまらないのに、口に出すことができない。
「なければ――」
「なんでもします! だからここにおいてください!」
陛下の言葉の続きを聞きたくなくて、遮るように言ってしまった。ものの、すぐにはっと我に返る。
今の私にできることなんてあるの?
食事すら手を借りなければまともにできないくせに、何を言っているのだと一蹴されるだろう。それどころか不敬だと怒りを買ってもおかしくない。
両手でドレスの裾をギュッと握りしめた。