黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「それがおまえの望みか?」
「え?」

 思わず顔を上げたら、真顔の――でもどこか機嫌のよさそうな陛下と目が合った。

「言っただろう、褒美をやると」
「いいんですか⁉」

 驚きに目を見開いた私に、陛下の口角が持ち上がる。

「ありがとうございますっ!」

 飛びつきたいほどうれしかったけれど、さすがにがまんした。

「そうと決まれば、色々と準備がいるな。まあ、そろそろやってくる頃だからちょうどいい」

 やってくる? 何がちょうどいいの? 

 首をひねる私をよそに、陛下はスッと眠る本体へと歩み寄る。そのままベッドサイドに腰を下ろし、ゆっくりと〝私〟に顔を近づけた。

「へっ、へーか⁉」

 いきなり目の前で〝私〟にキスをしようとしていて、焦って止めようと駆け寄ったが、あと十センチというところで彼は顔をくるりと横に向けた。

「息はしているな」
「え⁉」

 彼はゆっくり状態を起こすと、こちらを見た。

「どうしたんだ、そんなに焦って」
「えっと……」

 まさか『キスするのかと思った』とは言えず、もごもごと口ごもっていたら、コンコンと扉からノック音が聞こえた。

「入れ」

 陛下の合図の後開いたドアから数名の侍従達がわらわらと入ってきた。彼らは次々と大きな建具を運んでくる。またたく間に天蓋付きのベッドができ上がった。

「さすがに毎晩三人で寝るわけにはいかないからな」

 侍従たちが去った後、横たわる私本体をそっと抱きあげ、新設されたベッドへと移した。
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