黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「あの、エルマはそのときどこに?」
「エルマ? ああ、あの侍女頭か。そのときは入浴準備のメイド達と一緒にいたそうだ」

 陛下の答えに、これでエルマのことを疑わなくて済むと思ったらほっとした。エルマに限って……と一瞬でも思ってしまった自分が情けない。

 そういえば、あのときお茶をカップに淹れてくれたのはメイドのうちのひとりだった。けれど茶葉やカップを準備したのは別のメイドだったかもしれない。
 犯人が誰かわからないことは恐ろしいけれど、私を殺したいと思うほど憎んでいる人がいる。その事実にゾッとする。

「そういうわけで、不安要素があるうちはオディリアに他人に近づけることはできない」

 きっぱりとそう言い切った陛下に、私は胸が熱くなった。

 神託という抗えない状況で皇后にした私を、こんなにも大切にしてくれるとは思わなかった。

 タオルを絞り直している陛下を見ながら、ひとり感動していたのだけれど――。

 陛下の手が本体の胸もとのリボンの端を引いた。

「へへへへーか! いったい何をっ」
「オディリアをきれいにしているだけだが?」

 陛下は平然として、私の着ている夜着の襟もとをくつろげていく。

「待って! お待ちになってくだしゃい!」

 慌てて陛下に駆け寄り、足にしがみついて彼を見上げる。

「淑女の体を勝手に暴くのは紳士のすることではありません!」
「俺は彼女の夫だぞ」
「夫でもでしっ!」

 思いきり噛んだけれど、今は活舌なんて気にしている場合じゃない。

「もし今皇后様が目を覚ましたら、ショックでもう一度気を失ってしまいましわ!」
「そういうものなのか?」
「ものなのでし!」

 というか、見ているこっちも気を失いそうです!

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