黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
 自分が教皇庁から抜けたせいで、他の聖女達にかなりの負担がかかるようになるだなんて想像していなかった。帝国民が安心して暮らせる国になるようにと皇帝に嫁いできたのに、このままでは真逆の結果になってしまいそうだ。

 せめて元の体に戻れれば、皇后として聖女として自分にも何かできることがあるはずなのに……。

 今の自分にはどうすることもできないのが、もどかしくてたまらない。

「教皇庁からの救援が来るまでに、どうにかオディリアが目を覚ましてくれるとよいのだが」

 陛下はそう言って、愁いを帯びた瞳をそっと伏せる。
 教皇様なら今の私の状態がわかるかもしれない。
 でも、どうやって?

 今の私が教皇様に連絡を取りたいと陛下に頼んだところで、すんなり許可してもらえないだろう。理由を聞かれても説明できないし、そもそもただの幼児が教皇様との謁見に魔道具を貸してほしいというのもおかしい。

 仮に陛下の魔道具を借りて教皇様と話ができたとしても、今の私はオディリアじゃない。正体を明かすこともできないのに、解決方法も何もあったものじゃない。

 思わず「はあ」と大きなため息が出た。

「どうした、そんなに大きなため息をついて。退屈になったのか?」
「え、い、いえ……別にそういうわけじゃ」

 現状に行き詰っていました――なんて言えるわけがない。

「まあ、そうだな。ここには子どもの遊び道具なんて何もないしな」
「私は別に退屈だなんて――」

『思いません』と続けようとしたところで、陛下の手が両脇に差し込まれた。ふわりとした浮遊感に「きゃっ!」と短い悲鳴が漏れる。
 突然目線が高くなったせいで、怖くて陛下の頭にしがみつく。そんな私のことなど陛下はお構いなしだ。

「気晴らしにいいところへ連れていってやろう」

 陛下は私を抱いたまま、スタスタと執務室の外へと出た。


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