黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「ここって……」
「どうだ、きれいだろう。今が一番の見頃らしい」
辺り一面に咲きほこっているバラを見て、胸の奥から複雑な感情が込み上げる。
また陛下と一緒に見に来たいとは思っていたけれど、まさかこんなにも早く、しかもこんな形で来ることになるなんて考えもしなかった。うれしいはずなのに、素直に喜べない自分が悲しい。
「どうした? バラは嫌いだったか?」
陛下がうかがうようにこちらを見てくる。変な気を使わせてはいけないと、あえて明るい声を出す。
「いえ、大好きです! まるで女神様のお庭みたいで見惚れていました!」
「そうか」
「はい!」
優美な香りに包まれながらゆっくりとバラの生垣で作られた小道を進んでいく。二日続けてではあるものの、陛下に抱っこされているので目線が高い。前回よりも遠くまでバラ園を見渡せるのが新鮮だ。
進んでいくうち、子狼と遭遇した場所が見えてきた。
あの子狼、無事に家族の元へ帰れたのかしら……。
「狼の子はもう巣に戻っただろうな」
「そうですね」
なんだかんだ言っても子狼の心配をしている陛下は、やっぱり優しい人だと思う。頬が自然と緩むのを感じていると、陛下がこちらを向いた。
「なぜおまえが狼のことを知っている」
「あっ」
陛下と同じことを考えていたせいでつい返事をしてしまった。今の私はロゼだから子狼の存在なんて知らないはずだ。
金色の瞳にじっと見つめられ、背中に冷や汗が流れる。