黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「オディリア、早く目を覚ましてくれ」

 陛下は皇后の手をすくうように持ち上げると、手のひらに頬を寄せた。

「……っ」

 ピクッと自分の肩が跳ねる。別々の体なのに、まるで感覚が繋がっているかのように、ちいさな手のひらがじわりと熱を持つ。

「まぶたを開けて、翡翠のようにうつくしい瞳に俺を映してくれないか」

 せつなげに眉根を寄せた陛下が、間近から皇后の顔をのぞき込んでいる。
 見ているのも聞いているもの恥ずかしすぎてどうにかなりそうだ。

 私を悩ませているもうひとつの原因は、陛下の皇后に対するこの態度だ。

 陛下の腕に抱かれている状態ですら直視に耐えないのに、本人そっちのけで激甘セリフをくり出してくるのだからかなわない。

 一度は耐えきれず寝室から逃げ出したけれど、それはそれで陛下が何をしているのかが気になってたまらなくなり、がまんしきれずドアの隙間からのぞいてしまった。

 遠くからヤキモキしながら見ているくらいなら、近くにいて陛下が過度なスキンシップを取ろうとしたらすぐに止められるほうがいい。

 結果、毎回この時間私は向かいのベッドの縁に腰掛けて、陛下の抱っこで甘やかされる自分を見続けるという苦行に耐えている。

「どうしたら起きてくれるんだ」

 陛下はそう言うと、オディリアの手のひらに口づけた。

「ひゃっ」

 バラの棘でケガをしたときの、陛下の唇の感触がよみがえる。

 だめだめ!

 不埒な感覚を追い払おうと、勢いよくかぶりを振る。

 そんな、どう見ても挙動不審な私の行動にすら陛下はまったく気に留めない。オディリアしか見えていないようだ。

 私、いったいなんの修行をさせられているのだろう……。

 ベッドにもぐりこんでしまいたいのを必死にこらえながら、陛下の膝で眠っている自分を見つめた。体を包んでいる光は普段よりわずかに強い。毎回そうだ。陛下が触れている間はなぜかオディリアの光が強まる。

「どうして……」

 無意識に口から出たつぶやきに陛下がこちらを見た。

< 69 / 114 >

この作品をシェア

pagetop